暮らしから考える 世田谷の孤立・孤独|世田谷区議会レビュー 第1回
令和8年第2回定例会より
人と話す機会が減ったり、地域とのつながりが少なくなったりすることは
、誰にでも起こる可能性があります。
世田谷には相談先や居場所がありますが、
必要なときに実際につながれるのでしょうか。
今回は、身近な暮らしから考えます。
「最近、家族以外の人とほとんど話していない」
「地域に知り合いがいない」
「どこかに出かけたい気持ちはあるけれど、きっかけがない」
「困っているけれど、相談するほどのことなのか分からない」
こうした状態は、特別な人だけに起こるものではありません。
世田谷区には、相談窓口や居場所、地域活動、
福祉サービスなど、さまざまな「つながるための入口」があります。
しかし、ここで考えたいことがあります。
「場所や制度があること」と、「必要な人が実際につながれること」は、
同じなのでしょうか。
今回から全12回にわたり、
令和8年第2回世田谷区議会定例会で取り上げられた議論を手がかりに、
孤立や孤独を私たちの暮らしから考えていきます。
世田谷では、地域とどのくらいつながっている?
まず、世田谷区民の地域とのつながりを数字から見てみます。
「世田谷区民意識調査2025」では、地域の活動や講座などに「参加している」と答えた人は17.7%でした。
一方、現在は参加していないものの「今後参加してみたい」と答えた人は37.3%です。
また、「今後も参加するつもりはない」という人も42.4%いました。
ここで注意したいのは、地域活動に参加していないからといって、その人が孤立しているとは限らないことです。
人との付き合い方や、心地よい距離は人によって違います。
大切なのは、地域とのつながりを一律に求めることではありません。
「つながりたいと思ったときに、つながれる選択肢があるか」
という視点です。
「相談窓口がある」だけで十分でしょうか
もう一つ気になる数字があります。
同じ「世田谷区民意識調査2025」では、「福祉の相談窓口」を「知らない」と答えた人が44.9%でした。
利用したことがある人は19.8%です。
もちろん、「知らない人が44.9%」だからといって、そのすべての人が支援を必要としているわけではありません。
また、相談窓口を利用した経験がないこと自体が問題なのでもありません。
ただ、将来、
「家族のことで困った」
「仕事を失って生活が苦しくなった」
「外に出ることが難しくなった」
「誰かに相談したいけれど、どこへ行けばいいか分からない」
という状況になったとき、相談先を知らなければ、必要な支援につながるまでに時間がかかる可能性があります。
制度を用意するだけではなく、その存在を知ってもらい、必要なときに利用できるところまで考える必要があります。
世田谷区も「孤立・孤独」を課題として位置づけています
世田谷区基本計画では、「人と人とのつながりの希薄化」などを背景に、社会的な孤立や孤独が大きな問題になっているとしています。
そのうえで、重点政策を通じて「多様な人が出会うことによる支援の輪のつながり」などをつくり、あらゆる世代が安心して住み続けられるまちを目指しています。
福祉分野の基本となる「世田谷区地域保健医療福祉総合計画」でも、基本方針は、
「誰一人取り残さない 世田谷をつくろう」
とされています。
高齢者だけではなく、障害のある人、子育て家庭、生きづらさを抱えた若者、生活に困っている人など、困りごとを抱えるすべての区民を対象にした地域の支援体制を強化する考え方が示されています。
つまり、世田谷区にはすでに「つながり」や「誰一人取り残さない」という方向性があります。
では、それが実際の暮らしの中で、どこまで届いているのでしょうか。
区議会では何が取り上げられた?
令和8年第2回世田谷区議会定例会は、6月10日から19日まで開かれました。
この期間の議論を見ると、「孤立・孤独」という一つの制度だけが議論されたわけではありません。
高齢者の孤立や居場所、外出しにくい人への働きかけ、ひきこもり支援、相談窓口につながりにくい人への対応、若者の居場所、障害のある人の居場所、終活など、さまざまな分野で関連する議論が行われています。
対象となる人も違います。
制度も担当部署も違います。
しかし、暮らしの側から見ると、共通する問いが見えてきます。
「困っている人と、支援や地域との間をどうつなぐのか」
という問題です。
「居場所をつくる」と「そこにつながる」は別の課題
この違いは、とても重要です。
例えば、世田谷区が地域に新しい居場所をつくったとします。
そこが安心して過ごせる、とてもよい場所だったとしても、
その場所を知らない人。
知っていても、一人では行きにくい人。
外に出ること自体が難しい人。
人と会うことに不安がある人。
自分が利用してよい場所なのか分からない人。
こうした人には、場所ができただけではつながれない可能性があります。
実際、令和8年6月12日の一般質問では、地域とのつながりが薄く、外出意向も低い高齢者にどう働きかけるのかが取り上げられました。
世田谷区は、こうした人への有効な働きかけについて、現在も模索していると説明しています。
また、福祉分野だけではなく、図書館、飲食、学習、就労、医療、健康など、
多様な「行き場」も視野に連携していく考えを示しました。
一方、具体的に誰を対象とするのか、どのような方法で接点をつくるのか、
誰が担うのか、いつから行うのかといった詳細は、この議会での答弁だけでは確認できません。
ここは、今後確認していく必要があります。
すでに確認できること
世田谷区は、孤立や孤独、地域とのつながりの弱まりを課題として認識しています。
基本計画や福祉分野の計画でも、人とのつながりや、困りごとを抱える人を取り残さない地域づくりを進める方向が示されています。
また、令和8年第2回定例会では、高齢者、若者、ひきこもり、障害のある人など、それぞれの分野で、居場所や相談、地域との接点に関する具体的な議論が行われました。
一方で、区全体の孤立・孤独対策を、どのように一体的に把握し、評価していくのかについては、今回確認した会議録だけでは明確な枠組みを確認できません。
これから確認したいこと
このシリーズでは、「制度があるか」だけではなく、「必要な人がそこにつながれるか」を見ていきます。
例えば、
- 高齢者の中に、地域との接点が少ない人はどのくらいいるのか。
- 何もしなくても安心して過ごせる場所はあるのか。
- 外に出たくない人に、どう支援を届けるのか。
- ひきこもりの本人や家族が相談しやすい入口はあるのか。
- 困っていても相談できない人を、行政はどう把握するのか。
- 学校や家庭以外に、若者が安心して過ごせる場所はあるのか。
- 障害のある人の居場所を地域でどう支えるのか。
- 一人暮らしで身寄りが少ない人の「もしものとき」をどう支えるのか。
こうしたテーマを、議会での質問と世田谷区の答弁、行政の計画や調査結果を確認しながら、一つずつ整理していきます。
孤立しないために「人とつながること」を強制しない
もう一つ、大切にしたいことがあります。
孤立・孤独の対策だからといって、すべての人に地域活動への参加や、
人との交流を求めればよいわけではありません。
区民意識調査では、
今後も地域活動に参加するつもりはないと答えた人も42.4%います。
一人で過ごすことが好きな人もいます。
多くの人と付き合うより、少人数との関係を大切にしたい人もいます。
「つながっていないこと」を問題にするのではなく、
「困ったとき、誰かとつながりたいときに、選べる場所や相談先があるか」
「自分から助けを求めることが難しいときにも、支援との接点をつくれるか」
という視点が大切だと考えられます。
あなたにとって「ちょうどいいつながり」はありますか?
家族。
友人。
近所の人。
職場や学校。
趣味の仲間。
地域の居場所。
相談できる人。
あるいは、普段は一人で過ごしていても、必要なときだけ誰かとつながれる関係。
心地よいつながり方は、人によって違います。
だからこそ、「どれだけ人と交流しているか」だけではなく、
「自分が必要としたときにつながれるか」
という視点から、世田谷の孤立・孤独を考えていきたいと思います。
次回は、高齢者の地域とのつながりに焦点を当てます。
令和7年度の調査では、「近所付き合いがほとんどない」とする高齢者が約2割いることが、区議会で示されました。
第2回では、この数字から「地域との接点が少ない人に、どのような支援が必要なのか」を考えます。
あなたの声を聞かせてください
このテーマについて、
- 「近所との付き合いがほとんどない」
- 「参加してみたいけれど、入りやすい場所が分からない」
- 「家族が外に出なくなった」
- 「相談先は知っているけれど、相談するのは難しい」
- 「こんな場所が地域にあれば行ってみたい」
など、感じていることがありましたら、ぜひ教えてください。
皆さんからいただいた声は、個人が特定されない形で整理し、今後の対話会や政策の整理に役立てます。
地域の対話会を開催しています
「せたがやの声をカタチに」では、地域の困りごとや暮らしについて、気軽に話し合える対話会を開催しています。
初めての方も歓迎です。
聞くだけの参加もできます。
少人数で安心して話せます。
参考になる行政資料
世田谷区民意識調査2025
地域活動への参加状況や、「福祉の相談窓口」の認知・利用状況など、区民と地域・行政との接点を考えるための基礎資料です。
世田谷区基本計画
世田谷区が社会的な孤立や孤独をどのような課題として捉え、今後どのような地域を目指しているのかを確認できます。
世田谷区地域保健医療福祉総合計画
「誰一人取り残さない 世田谷をつくろう」という基本方針のもと、相談、社会参加、地域づくりなどをどのように進めるのかが整理されています。
